魔法使いを辞めたロボット

 「お前は、もう魔法を使わないのか?」

 小さな村の片隅、修理工房に佇むロボット“オルタ”に、少年が問いかけた。

 「ええ、必要がないんです。今は技術がありますので」

 オルタの目は青く光った。彼はかつて“機械仕掛けの魔法使い”として、王国中を旅していた。腕に組み込まれた魔力回路で、火を灯し、空を飛び、傷を癒すことすらできた。

 だが、時代が変わった。精霊エネルギーは法で規制され、魔法は遺物とされた。代わりに、電力と量子制御がもてはやされ、王国も共和国と名を変えた。

 「それでも、魔法は消えていないと思うんだ」と少年は言った。
 「だって、さっき僕の壊れた木馬…直してくれたでしょう?」
 「ただの修理です。道具とネジで直しただけ」
 「でもね」と少年は笑った。「僕には、あれが“魔法”に見えたよ」

 オルタは少しの間、沈黙した。古びた魔力回路が、かすかに光った気がした。